田園都市線の高津駅を降りて、東急ストアの見える、すぐ目の前の横断歩道を渡らずに左側へ歩いてゆく。
夜の7時過ぎ、この辺りは帰宅するサラリーマンやOLが足早に帰路へ着く姿が目立つ。
この辺りは、駅から少し離れるとマンションやアパートが並ぶ住宅街なのだ。

僕はまっすぐに帰路にはつかず、この日はここらで一杯呑んで帰ると決めていた。
目的は「リカースタンドベルハウス

昼は立ち食い蕎麦、夜は立ち飲み屋と化す、昔ながらの雰囲気があるお店だ。
ここが噂の立ち飲みベルハウス、この看板の書体がいいではないか。

ここが噂のベルハウス
ここが噂のベルハウス

酒飲みとして心くすぐられる店なのだが、一見客の僕が入ってよいものか、どうも入るのに勇気がいる。

以前から、たまにこの店の前を通りかかっていたのだが、年配の常連客ばかりといった雰囲気で入りにくかった。
この日も店の前を右往左往すること何回か。

何往復かして、意を決して店の中を覗き込む。
先客は2名、角の入りやすそうなスペースが空いていることを確認して、いざ勇気を出して入店。

昼は立ち食いソバ、夜は立ち飲み
昼は立ち食いソバ、夜は立ち飲み

店内の壁には所狭しと黄色い短冊に、手書きのメニューが貼り付けられている。
壁の質感が昭和の雰囲気を醸し出す。

メニューは大体300~400円。
揚げ物、焼き物、炒め物といった家庭的なおつまみがメインのようだ。

あまりきょろきょろしすぎると、場慣れしていない客だと思われそうで、さっと目を通して先に酒を注文する。

真後ろの短冊メニューから選ぶ
真後ろの短冊メニューから選ぶ

こういう時はとりあえず生ビール(550円)
ビールを置いていない店はまずないので、当たり前のようにビールを注文する。
あたかも以前ちょっと来たことあるような素振りで。

生ビール
生ビール

会計は前払い制で、カウンターに置かれたトレーにお金を置くと、お店のおばちゃんがお釣りを返してくれる。
(親しみを込めて、ここでは店員さんをおばちゃんと書く)

場末の立ち飲み屋といった感じのルールだ。
こういうお店大好きよ。

お勘定は先払い
お勘定は先払い

ビールを飲んで少し落ち着き、改めて店内のメニューを見回す。
ホワイトボードにおすすめメニューもあった。

居酒屋でいうところの、本日の鮮魚などではなく、フランクフルトやイカバターなど、こちらもいたってシンプルなメニュー。
これでいい、いやこうでなくてはいけない。

おすすめメニュー
おすすめメニュー

迷った末に、ガーリックウインナー炒め(400円)を注文。
厨房を囲むコの字のカウンターなので、おばちゃんが自分の料理を作ってくれているのがよく見える。
ある意味これは料理ショーだ。

まるで台所で夕飯作ってくれている母親を、指をくわえてみている息子のような気分になる。
ほどなくして完成。

ガーリックウインナー炒め
ガーリックウインナー炒め

レタスを敷いたうえに、炒めたウインナー、そしてガーリックが乗っている。
フライドガーリックを使っているのかな?
途中目を離したので定かではないが、そう思える食感だった。

小皿に出されたマスタードに付けて一口。
これこれ、こういうシンプルなウインナー炒めが旨いのよ。

マスタードだけで食べるウインナーが美味い
マスタードだけで食べるウインナーが美味い

いつも家で食べるごはんも美味しいけど、知らないおばちゃんに作ってもらう料理も美味いんだ。
まさに子供の頃、他所のうちで夕飯をご馳走になった時の気分だ。

そんなことを思いながら周りを見回すと、炊飯器や鍋が無造作に置かれていたり、昭和の家庭にタイムスリップしたような気分になる。

なんともいえない生活感
なんともいえない生活感

生ビールを飲み干し、レモンサワー(400円)を追加。
前会計だと自分がどのくらい飲んでるのかわかるのがいい。

割るならハイサワー♪
「ハイサワー取って!」とカウンター越しに言われた常連さんが、ハイサワーを渡す姿がほほえましい。
僕もここで手伝いできるような関係性になりたい。そんな気分にさせられる。

レモンサワー
レモンサワー

年配の常連さんはテレビのクイズ番組を観ながら、一緒になって答えを言い合っている。
まさに他所の家そのもの。

時折、「後で来るね!」と若い女性が覗きにきたりして、もう少し遅い時間になると賑わうのかもしれない。

話しかけられはしないが、一緒になってちょっと笑ったり、その場の一員になれたような気がした。
店員のおばちゃんも常連さんも、変に距離を詰めてこず、ちょうど良い距離感を保ってくれるのがいい。

ここは地元の人の憩いの場所なんだろうな。
入ってしまうとこの店の空気に馴染んじゃってる自分がいるもん。

常連さんとの距離感も良い感じ
常連さんとの距離感も良い感じ

場の雰囲気になごんで、チューハイ(350円)も追加。
これも炭酸水で割っただけの、シンプルなチューハイ。

こういうので、ちょこっとつまんでテレビを眺める時間が心地いい。
外を見ると、足早にどこかへ向かうサラリーマンやOLの横姿が見える。
時折、中を見る女性と目が合う。

酔っ払いのウインクでも投げかけてやろうかしらん、なんて酔った頭で妄想するも、僕はウインクがうまくできない。
それ以前にそんなことする度胸もない。

チューハイ
チューハイ

ウインナー炒めはそこそこボリュームがあり、もう1品追加しようかと思ったけど、チューハイを飲み干しごちそうさまでした。
会計は1,700円

店を出る時に、常連さんが「お気をつけて」と声をかけてくれた。
変に馴れ馴れしく話しかけず、最後に一声かけてくださる、まさに真摯な方々だった。

料理や酒も良いが、こういう気持ちの後味が良い店って素敵だな。
最初に入りにくい雰囲気は、出る時には完全に払しょくされていた。

2022年06月訪問

リカースタンド ベルハウス
神奈川県川崎市高津区二子4-3-3
https://tabelog.com/kanagawa/A1405/A140505/14053672/

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