会社を少し早めに帰って、三軒茶屋のもつ焼き屋で一杯やり、次の店を探して徘徊する。
夕方に酔いが回った状態で歩く街は、これから夜になる憂いを帯びているように感じる。
一日が終わってゆく、この時間帯が一番好きだ。
歩いていると、何ともいえないノスタルジーを感じる店がある。
「炭火やきとり とりまさ」
やきとりと書かれた、くすんだ赤ちょうちんが歴史を感じる。
雰囲気がありすぎて、自分のような若造(40代半ば)が入ってよいものか、ちょっと中の様子をうかがう。
幸いと言ってよいのか、先客はほぼいないようなので、店の中へ入ってみる。
中に入ると、先客は一組くらいしかおらず空いている。
新型ウイルスが勢い付いている中、カウンター席にはアクリル板が設置してある。
アクリル板には、多少閉塞感があるが、一人で静かに飲みたい自分にとってみると、パーソナルスペースが確保できて飲みやすい。
少し古めかしい感じの、店の雰囲気がたまらない。
店先の趣のある雰囲気を、裏切らない良さがある。
焼き鳥の店らしいので、焼き鳥は必ず頼もう。
先ほどもつ焼きを食べてきたので、少し手の込んだものを食べよう。
一品料理にも鶏料理が多く、ささみ茶漬け、鶏そばなどが気になる。
焼き鳥食べた後の、〆の鶏そばは美味いだろうな。
酒はさきほどホッピーを飲んできたので、無難にプレミアム・モルツにしようか。
生ビール中ジョッキ(490円)を注文。
店に入って最初に一杯のビールはいつでも旨い。
焼き物が焼けるまでの時間を、唐辛子味噌厚揚げ(390円)で待つ。
かつお節がひらひらと踊る、熱々の厚揚げに、ピリッと辛い唐辛子味噌。
チェーン店では、こういうのはなかなかに出てこない。
厚揚げと味噌ってよく合うんだな。
厚揚げといえば生姜醤油のイメージだったが、こういう食べ方もあるんだ。
これは美味い。
辛子味噌厚揚げを頬張り、ビールを飲みながら、店の入り口に目を移す。
時折、人が通りかかるのを、眺めながら飲む酒が旨いんだ。
この店で、少し明るい時間からのんびりと酒を飲んでいる、という優越感を感じることができる。
性格悪いと思われるかもしれないが、人が働いている時間に飲む酒は最高なのだ。
生ビールを飲み干し、角ハイボール(480円)を追加。
平日のこの時間帯は、どこの店も空いていて入りやすい。
一人で古き良き酒場の雰囲気を、じっくりと味わうことができる。
仕事でパソコンの前に座っていた体から、すっと力みが消えていくように感じる。
焼き物がくるまで、どうやら2杯目を待つことはできなかったようだ。
厚揚げだけでも十分に飲める。
今日は体調が良いせいか、やけに酒が旨い。
体調もさることながら、気持ちにゆとりがあるのも大きいだろう。
酒は色々な酔い方をするが、やっぱり心身共に状態が良ければ、酒も旨いもんだ。
ピーマン肉詰め(300円)が焼きあがる。
なんだかとんでもなく美味しそうなものが出てきたぞ。
最初に皿を受け取った時、最初に感じた感想だ。
端が焦げているのが、なんとも言えない、シズル感を出している。
この雰囲気だからこそ、この焦げ目が映える。
串からかぶりつくと、熱々のピーマンからじゅっと汁が出て、そこに肉の弾力が加わる。
パリッとしたピーマンも良いが、熱く焼かれてしなっとしたピーマンも美味い。
美味い、美味すぎる。
特製たたき(200円)も焼きあがる。
写真がぼけてしまったが、鶏肉をぎゅっと握ったつくねのようなものである。
甘いたれがかかっており、これもすこぶる美味い。
ピーマン肉詰めにもかかっていたが、この上品な甘さのたれが美味い。
ここの焼き物は、このたれがある限り、何を食べても美味いはずだ。
酎ハイ(400円)を追加。
日本酒といきたいところだが、今日もはしご酒なので、日本酒は控えておく。
日本酒の代わりと言ってはなんだが、美味いたれ味には、邪魔にならないプレーンなチューハイがいい。
おそらくキンミヤを使っているであろう、焼酎臭さのないほんのり甘い、すっきりとしたチューハイだ。
これがまた、甘いタレの特製たたきに合う。
この店は雰囲気も味もいい、星5点だ。
美味い酒と美味い焼鳥。
良い店に当たった時の満足感は、達成感のようにも感じる。
俺、いい店見つけちゃった。
だからと言って、誰かを連れてくるわけでもないのだが。
会計は2,486円
2020年08月訪問
とりまさ
東京都世田谷区三軒茶屋2-14-22 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131706/13140040/
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