仕事帰りに一杯飲んで帰ろうと、二子玉川駅で降りてみた。
多摩川を渡れば、いつもの街並みや酒場が広がるのだが、たまには静かな街で酒を飲みたい。
酒は飲みたいけど、喧騒感の中に入っていくのは、少し躊躇する日もある。
駅前の高島屋に並ぶハイブランドショップを眺めがら、自分の財布に入っている千円札の数を頭の中で反芻する。
高島屋の裏には飲食店が立ち並ぶが、勢いよく入る感じの雰囲気ではない店も多い。
路地を歩き回り、焼き鳥の赤ちょうちんがぶら下がる「ます家」を発見。
隣にも同系列のお店があり、そちらは鮮魚が売りのようだ。
店内を覗き込むと、かなり賑わっているが、カウンター席に空きがありそう。
初めて入る店が賑わっていると、どうも気遅れするが迷っている場合ではない。
店内に入ると、外から見えたカウンターの空席に通される。
目の前のメニューを手に取る。
酒のメニューはハイボール、サワー、ホッピーなど串焼き屋らしいラインナップ。
これでいい。しかもホッピー400円とは結構安い。
串焼きがメインみたいなので、串焼きを何本か頼もうか。
関東風黒おでんなんかもあり、値段もかなり良心的だ。
「二子玉川=セレブ」という、僕の頭の中の固定概念が、べりべりと剥がれていくを感じる。
なんだ、こんな大衆酒場もあるんじゃないか。
レバカツ、ハムカツなどの居酒屋の揚げ物、どて煮込みなんかもある。
ます家イチオシの馬ぶつが気になるな。
まずはホッピー白(400円)、お通し(300円)は切干大根。
こういうあっさりしたお通しをつまみながら、空腹に酒を流し込む最初の時間がいい。
注文した料理を待つ、このちょっとしたウォーミングアップが仕事から酒へとスイッチを切り替えてくれる。
最初のあてに、気になった馬ぶつ(580円)を注文。
言ってみれば馬刺しなのだが、「馬ぶつ」という名前が何ともそそるではないか。
おろしにんにくに、甘い馬刺し用の醤油を付けていただく。
薄い馬刺しよりも、噛み応えがあり、口の中でゆっくりと馬肉の旨味が広がる。
馬刺しよりも肉の旨味をよく味わえる。これは美味い。
馬ぶつを噛みしめながら、そこに流し込むホッピーが旨い。
串焼き屋で飲むホッピーってのが、格別に旨いんだ。
ホッピーを飲み干し、おかわり焼酎(200円)を追加。
これは酒がすすむ。
続いて焼き物の、かしら、たん、しろ(各140円)。
味付けはすべておまかせ。
かしらとたんは塩、しろはたれで。
まずはしろからいただく。
甘いたれに焼けた香ばしい香り、ぐにぐにとした噛み応えがいい。
臭みもなく美味い。
たんを噛みしめると、しこしことした歯ごたえにじゅっと肉汁がジューシーで美味い。
たんといえば塩だけど、たれで食べても意外と美味しいのではないか、なんて思う。
塩とたれ、2本食べればいいのだろう。
かしらもまたぎゅっとジューシー。
やっぱり焼きとんにはホッピーが合う。
店内に充満する焼きとんのタレが焦げる香りを鼻に吸い込み、ぐいっと飲み干すホッピーの旨さよ。
ホッピーを終えて、チューハイ(290円)を追加。
すっきりしたチューハイが飲みたい夜もある。
チューハイは金宮焼酎を使っているであろう、ほんのりした甘さが漂う。
金宮の何がいいって、焼酎臭さ、酒臭さがないのがいい。
残った串焼きを少しずつ大事につまみながら、チューハイを楽しむ。
今日はなのか、いつもなのか、ずいぶんと店内がにぎやかだ。
女性客同士が楽しそうに、大きな声で笑っている。
自分はここ数年大声出して、腹を抱えて笑ったことがあるだろうか。
毎日判で押したように同じ時間に出て、同じ電車に乗る。
帰りもほぼ定時退社、同じ電車に乗るために駅へ小走り。
家に帰ればすぐに夕飯を食べ、風呂に入り、寝るまでの数時間をなんとなく過ごす。
たまにYouTubeでお笑いを見て、にやっとすることはあっても、声を出して笑うようなことはない。
笑うのは健康に良いそうだ。
腹を抱えて笑うことの大切さ、そんなことをぼんやりと考えた。
チューハイを飲み干し、会計は2,409円。
外に出ると、店内の喧騒とは真逆の静けさ、車の走る音だけが聞こえる。
さて、もう1軒。
2020年02月訪問
ます家 二子玉川店
東京都世田谷区玉川3-9-2 土屋ビル 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131708/13117781/
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