海老名は住んでいたこともないし、通勤や通学で使ったこともない。
何かの用事で降りた際に、駅前は開発されているものの、少し足を運ぶと急に田舎っぽくなる。
その雰囲気が好きで、何気なく小田急線に乗って足を運びたくなる。
新宿や渋谷ほど、人が多くガヤガヤしていないけど、必要なものはそろう。
東京都内に住んだことのない、生粋の神奈川県民の自分にとって、こういう街がちょうどいいのだ。
僕が海老名に行った時、海老名駅からすぐの「ビナウォーク2番館」は、必ず足を運ぶ場所だ。
目的はもちろん酒。
酒屋が軒を連ね、けっこう早い時間から空いている店もあるので、酒は欲しくなってうぐうぐと喉が鳴る。
この日は、前から気になっていた「なか屋」へ直行。
若い頃ここを通った時に、なんとなく店構えが気になって、少し覚えていたあの店の暖簾をくぐれる。
一人飲みに慣れていない若い頃は、中年の酔客だらけの店に入るのは、若干気遅れした。
40代中盤になり、やっとどこの店でも入れるようになった気がする。
外は明るいがすでに時間は3時過ぎ。
ぎりぎり昼飲みと言ってよい時間帯だろうか。
暖簾をくぐると、先客の声はするようだが、カウンターは貸し切り状態。
遠慮なく一番端の席に腰をおろす。
立てかけてあるメニューは達筆な手書きのメニューをコピーしたもの。
何人もの酔客が手に取ったであろうことがうかがえる、シミとしわの付いたメニュー。
居酒屋のメニューなんてものは、こういうのがいいんだ。
これは酒を飲まぬ者に言ってもわかるまい。
しかも180から280円のつまみが並び、とにかく安い。
酒のメニューを見ると、下町ハイボールや電気ブランなど、下町を思わせる酒が目に止まる。
これだ、1杯目の酒はすぐに決まった。
割烹着を着た年配の女性が、お通し(170円)と下町ハイボール(350円)が運んでくれた。
カウンターの年季の入り方と、割烹着がマッチしている。いい。
下町ハイボールを口に運ぶと、チューハイの焼酎の香りに、ほんのりと梅シロップの香りが追いかけてくる。
このちょっと薄めの梅の香りとシロップの甘みが美味い。
カットレモンが入っているのもうれしいところ。
お通しはレンコンのきんぴら。
なんてことはない、手作りの総菜だが、これがいいのだ。
先客はいるものの、静かで貸し切りのような贅沢な空間。
続いて、ハムエッグ(280円)を注文。
こういうところでは、家でも食べれるようなシンプルなつまみがいい。
創作料理より、この古めかしいカウンターで食べるハムエッグなのだ。
周りが赤い、昔ながらのハムに目玉焼きがひとつ。
ハムエッグを頼むと、目玉2つのことも多いが、つまむには1つで十分だ。
醤油をたらりとひと回しして食べる。
やけに美味い。
続いて、納豆玉子(280円)。
今日ははしご酒するつもりなので、シンプルで胃に負担のないメニューを選ぶ。
小鉢にそのまま入った納豆に、生卵、ねぎ、端っこに練りからし。
いつも食べているパックの納豆のたれではなく、醤油をかけてかき回す。
いつも食べている納豆よりも、薬味と玉子がある分、手が込んでいるように感じる。
これまた年季が入ったカウンターで食べるとやけに美味い。
昔は納豆は、たれじゃなくて、醤油と辛子で食べていたもんな。
田舎のおばあちゃんちの朝ごはんを思い出す。
下町ハイボールが美味かったのでお替り。
ハムエッグの厚めのハムに、卵の黄身を混ぜて頬張り、そこにほんのり甘い下町ハイボール。
やけに美味い。
あたりを見回すと、柱も扉もすべてに年季が入っている。
ビナウォーク自体、そこまで古い建物ではないので、どこかから持ってきて内装をしたのだろうか。
店に設置されている時計から扇風機から、すべてに味がある。
ネット環境と空調と、トイレがちゃんときれいなら、こういう家に住んでみたい。
そう思うものの、不便を許容できない自分がいることにも気づかされる。
こういう雰囲気は、このひと時だから、自分にとっては良いのかもしれない。
下町ハイボールを飲み干し、ごちそうさまでした。
会計は1,570円。軽く飲んで食べて、この値段は大満足。
さて、もう1軒。
2020年03月訪問
大衆酒場 なか屋
神奈川県海老名市中央1-8-1 ビナウォーク2番館
https://tabelog.com/kanagawa/A1408/A140801/14030538/
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