溝の口の老舗居酒屋「酒蔵十字屋」で飲み、その足でもう1軒。
いつも常連客で混んでいる溝の口の名店「やきとりどん」へ。
溝の口西口商店街の喧騒を抜けて、静かな小道に入ると「どん」の文字が大きな赤ちょうちんが浮かぶ。
味のある佇まいで、店内を覗くとたいていは常連さんと思しきお客で溢れている。
時間によっては入れないことも多く、この日はラッキーなことにカウンター席が一席空いていた。
店内は焼き鳥を焼く煙で煤けた天井と壁、ここだけ時間が止まったかのような雰囲気だ。
これぞ、昔ながらの焼鳥屋。
チェーン店では絶対に出せない、時が刻んだ味わい深い雰囲気だ。
メニューはシンプル、焼鳥に一品料理。
厚揚げ、ちくわの磯辺揚げなど、創作料理ではなく文字だけで想像できる分かりやすいメニュー。
カウンターの背面のホワイトボードには、その日のお刺身などおすすめメニューが書かれており、
首を動かしながらメニューを考える。
地酒もかなり安い。
僕の好きな黒龍、鳥海山も580円とは、居酒屋でこの値段はなかなかないぞ。
地酒も惹かれるところだが、先ほども日本酒を飲んできたので、ここはさっぱり梅酢サワー(370円)。
梅サワーではなく、梅酢サワーというのが惹かれた。
疲れている時は酸っぱいものが飲み食いしたくなる。
あ、このお店はお通しがない。
甘酸っぱい梅酢サワーを口に運びながら、背面のおすすめメニューと手元のメニュー、
壁の短冊ときょろきょろと店内を見回す。
すると隣に一人で座って飲んでいたおばちゃんに「お兄さん、何か頼まないの?大丈夫?」と
声を掛けられ、慌てて一品料理を注文。
このお店は常連の方が多いみたいで、奥の席は大御所と席が決まっていたり、こういうお世話を
焼いてくれる年配の方が多いのだ。
僕はこの店で何度も年配の常連さんに話しかけられている。
こういう店もたまにはいい。
酸っぱいもの続きで、なまこ酢(380円)を注文。
なまこ酢は大好き。ねぎともみじおろしの薬味がうれしい。
スーパーでも売っているが、家で食べる時はこういう薬味まで手が回らないことが多い。
コリコリとした食感に酸味の効いたポン酢がいい。
やはりもみじおろしの辛みがあると全然違うな。
これは酒だ。
ということで、清酒一合(350円)を追加。こちらは常温で。
徳利の「大関」の文字が味があっていいな。
なまこ酢にはやっぱり酒が合う。
酢の酸味とほんのりと香る海の香りが、日本酒の甘みを引き立てる。
この年季の入ったカウンターに置かれた徳利が風情があっていい。
眺めているだけで絵になる風景だ。
しばらくして、カウンター越しに店主が焼いていた焼き鳥が到着。
ここの店主の方は優しく穏やかに注文を聞いてくれて、すごく感じの良い方。
店の雰囲気から、頑固おやじが焼いているのかと思っていたら大違い。
ねぎま、たん、かしら(各100円)
安いよな。
炭火で焼かれた熱々の焼鳥は絶品。
辛子味噌をつけて味を変えながら楽しむのもまた良し。
これは酒がすすむ。
焼鳥は肉や焼き方もさることながら、雰囲気も僕にとっては重要なスパイス。
味のあるカウンターにすっと出された焼き鳥を頬ばり、手酌で酒を飲む。
この一連の流れもまた美味しさのひとつだと思う。
梅酢サワー、清酒一合、なまこ酢、焼鳥3本で1,540円。
やきとりどんは、溝の口の名焼鳥屋であった。
2020年3月訪問
やきとり どん
神奈川県川崎市高津区下作延1-2-6
https://tabelog.com/kanagawa/A1405/A140505/14023423/
<この記事の動画はこちら>
https://youtu.be/iHZbXudTLXU