高津駅を降りてすぐ、東急ストアが見える横断歩道を渡り、斜め左に入ると「ほおずき」と書いてある、大きく白いちょうちんが目を引く。
ここを通るたびにずっと気になっていて、店の前まで行っては中を覗いて入ろうか入るまいか、ずっと迷っていた。
まだ自分には早いのではないだろうか、そんなことを考えて躊躇していた。
というのは僕が30代までの話で、40代になった今、僕は一直線にこの店へ向かう。

ずっとずっと気になっていた居酒屋で、食べログで何度も何度も内観の写真を見ていた。
余談だが、僕は食べログで料理の写真を見るより、内観とメニューの写真が一番よく見る。
肴と雰囲気、そこが重要なのだ。

白い大きなちょうちんが目を引く
白い大きなちょうちんが目を引く

店の前の看板には「四季の味 ほおずき」とある。
この四季の味というのが良いではないか。

暖簾はほどよく年季が入っており、店の佇まいにも古き良き居酒屋のそれを感じる。
居酒屋なのか、小料理屋といった風情もある。

なんでもいい、今日はこの店に入ると決めて高津駅で降りたのだ。
中はよく見えないので、意を決して暖簾をくぐる。

味のある店先
味のある店先

店内に入ると、カウンターと小上がりの席がいくつかある。
先客のグループが1組おり、いい感じででき上がっているようだ。

カウンターの上部にある黒板には、手書きでメニューが書いてある。
その日の魚の天ぷらや刺身などはここに書かれているようだ。
年配の女性の店員さん、厨房にはご主人がひとり立っている。

カウンター上の手書きメニュー
カウンター上の手書きメニュー

手元のメニューで酒を確認。

そんなに種類があるわけではないが、逆にそれがいい。
若者がくるような店は、凝ったサワーやカクテルなどがたくさん並んでいるが、ここにはそれは必要ない。

酒のメニュー
酒のメニュー

地酒と本格焼酎のメニューも無難に揃っている。
地酒はまあ、よく見る銘柄。

地酒のメニューもある
地酒のメニューもある

つまみメニューは、揚げ物、一品料理、焼き物とけっこう幅広い。
がっつり若者の居酒屋メニューでなく、しっぽりと飲むのにふさわしい食材が目立つ。
これは期待しかない。

おつまみメニュー
おつまみメニュー

まずは瓶ビール(630円)で舌を湿らす。
この小さなグラスがいいではないか。

瓶ビールを飲む時のグラスのサイズは、大きなものでなく、飲み干せるぐらいのサイズがちょうどいい。

まずは瓶ビール
まずは瓶ビール

まずはグラスにビールを注ぎ、今日の自分を労う。
雰囲気も相まってビールが旨い。

目の前のケースには食材が置かれている。
こういう居酒屋って最近あまり見かけなくなった気がする。

今日の魚が目の前に
今日の魚が目の前に

ビールを口にはこんでいると、お通し(350円)を出してくれる。
いくらのおろし添え、ポテトサラダ、いかの煮物の3品。

この3品付いてくるっていうのが非常にうれしい。
これだけでビール1本いけるではないか。

お通し
お通しは3品

いくらはこの少しってのがいい。おろしを混ぜて少しずつ口に運んでビールを流す。
ポテトサラダは、じゃがいもがごろごろしている手作り感のある感じがいい。
あっさりとした味付けで家庭的な味だ。

一番気に入ったのが、いかの煮物。これがいい味出している。
しっかりした味付けに、煮込んで冷やしてちゃんと味を沁み込ませた感じが最高だ。

これなら最初から日本酒でもいいくらい。
このお通しで、完全にこの店が当たりだと確信した。

お通しを堪能しながらビールを飲んでいると、スーッスーッとまな板で切る音が聞こえてくる。
これは僕が頼んだあれだ。あれを切っている音。

お通しだけで瓶ビール1本いけそうだ
お通しだけで瓶ビール1本いけそうだ

しばらくして、するめいか刺し(780円)が出来上がる。
まな板でいかを切る音がしていたので、余計に旨そうに見える。
切れているのではなく、切ってくれるってのがいいじゃないか。

早速、わさび醤油を付けて一切れいただく。
ねっとりと歯茎に絡みつくような食感と、いかの旨味が口いっぱいに広がる。
これは美味い。

するめいか刺し
するめいか刺し

気になった、納豆いそべ揚げ(480円)も注文。
一体どんなものかと思ったら、納豆を海苔で包んで揚げたもののようだ。

たれにくぐらせて食べると、サクッとした食感に納豆の香りと大豆の食感。
軽くて食べやすい。
納豆を揚げる難易度は分からないが、こういうの家でも作って欲しい。
いや、簡単そうに見えて、こういうのが難しいのかもしれない。

納豆いそべ揚げ
納豆いそべ揚げ

つまみが出そろったので、日本酒熱燗(380円)だ。

地酒にしようか迷ったが、肴が良いので銘柄を気にせず熱燗にした。
酒を頼むと、お猪口をざるの中から選ばせてくれる。
ちょっとしたことだけど、こういうのがうれしい。

いか刺しを食べて、追いかけるように熱燗を飲む。
たまらない。

日本酒熱燗
日本酒熱燗

家では地酒を冷やで飲むことが多いが、居酒屋では熱燗、銘柄指定なしで飲むことが多い。
値段のこともあるが、居酒屋はつまみが美味いので、酒は酒であればいい、という気分になる。

どちらかというと、職人さんが作った美味いつまみと雰囲気を味わいたい。

これぞ日本の居酒屋だ
これぞ日本の居酒屋だ

のんびりと飲んでいると、グループ客が1組に、年配の女性客が1人入ってきた。
女性客は身なりがきちんとしていて、姿勢よく白ワインを飲んでらっしゃる。

この女性を見た時、格好良いなと思った。
僕は仕事柄、スーツではなく私服の事が多く、ファッションに興味があまりないので、けっこう適当な服を着ている。身なりが良いとは決して言えない。

酒場に行くにしても身なりを整えて、シャンとした姿勢で飲む。
こういう飲み方ができるようになりたいなと思った。

日本酒熱燗を飲み干し、もう少し飲もうかと思ったが、はしごしたいのでごちそうさまでした。
会計は2,620円

ただ酔うだけでなく、老舗の居酒屋には学びがある。
そんなことを考えながら店を出た。

この雰囲気の居酒屋は、溝の口、高津周辺でもそうはない。
貴重な存在だ。機会があったらまた来たい。

2020年10月訪問

ほおずき
神奈川県川崎市高津区二子5-1-2
https://tabelog.com/kanagawa/A1405/A140505/14026835/

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